かねてから問題が指摘されているアメリカの数学(算数)教育。スタンフォード大の教授は、「数学に苦労する子供にはゲームが役に立つ」と考え、新しい教育法の開発に取り組んでいる。
この人物は、ナショナル・パブリック・ラジオで“数学の専門家”として知られるキース・デヴリン博士。数学の学習においては「量的なリテラシー(または日常数学のリテラシー)」を育成することが重要であり、ビデオゲームは、そのリテラシー育成のために教師の助けになるという。
例えば、野外市場の屋台で働くブラジルの子供たちは、喧噪の中でも、値段やお釣りの計算を間違えることはない。ところが、教室で紙と鉛筆をわたされ、学校で教わる式を用いて同じ計算問題を解こうとすると、つまずいてしまう。
これは、数学には「難しいもの」というイメージがつきまとっているため。映画やテレビで、数学者が難解そうな数式に取り組んでいる姿が、そうしたイメージを人々に植え付けている。大半の人は中等学校から脱落しはじめていることから、数学の学習を楽しく、面白くすることが大事だと博士は考えた。
そこで、かけ算の九九や方程式のルールを頭に詰め込むのではなく、数学的思考を促進するツールとして、ビデオゲームを活用しようと提案。同業の数学者やゲーム開発者たちとチームを組み、学習支援を目的としたゲームを作っている。
具体的にどんなゲームなのかはまだ不明だが、これにより、数学教師の役割は根本的に変わってしまうのだとか(もちろん博士は「教師が用済みになるわけではない」とも言っている)。そして、強力な新ツールを活用することで、学習者一人一人が能力の限界に挑戦できるようになるらしい。
「どんなビデオゲームだって学習装置として機能する。殺人やクルマの盗難と同じように、数学だって学べるのです」というデヴリン博士。この、ゲームへの偏見をにおわす言葉には首をかしげるが(ゲームに反感をもつ人に向けた方便だとは思うけれど)、数学を面白くするゲームの開発には期待したいところだ。
(中島理彦)
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