津波で被災した宮城県名取市の県農業高校が、スクールバスでの「車中授業」を始める。県内3校に間借りして新学期に臨むため、長距離送迎で授業時間が減るのを防ぐ苦肉の策だが、毎日約140キロ往復する生徒も出そうだ。

生徒数695人。仙台空港の北約1.5キロにあり、津波で校舎や寮が浸水。実習用の豚舎や鶏舎は流され、田んぼも使えなくなった。仮校舎を名取市内に建設予定だが、完成は9月。それまで加美農業(色麻(しかま)町)、亘理(わたり=亘理町)、柴田農林(大河原町)の3高校に間借りし、学科や学年ごとに生徒を分ける。

車中授業を受けるのは、最も遠い加美農業に通う農業機械科などの約240人。農機具がそろっているのは道のりで北へ約60キロ離れた同校だけだった。

生徒らは朝8時、いったんJR名取駅近くに集合。6台のバスに分乗し、高速道路経由で片道約1時間半かけ、学校を目指す。行きは1時間目、帰りは6時間目の車中授業の時間だ。

「90分間何もしなかったら、逆に生徒には苦痛かもしれない。有効に活用したい」と白石喜久夫校長。生徒が車酔いしないよう、教材のビデオを見たり、国語の輪読をしたり、負担の少ない内容にする考えだ。

だが、問題もある。途中の仙台市から通う生徒も多く、バスに途中で拾ってもらう方が便利なのに、学校は「車中授業に差し障る」として認めない考えだ。仙台駅からだといったん約10キロ南下し、そこから逆に約60キロ北上。毎日約140キロを移動することになる。

仙台市から通う新入生の男子生徒(15)は「最初に聞いた時はびっくりした。朝5時ごろ起きないと間に合わない。バスの中で寝ちゃうか、車酔いするか、2時間目に寝るかのどれかになりそう」。母親は「震災だから仕方がないし、先生方も苦渋の決断だったと思う。でも子どもが耐えられるか心配です」と話す。

始業式は22日。再び休みに入り、学校は5月9日に再開する。(花野雄太)