新型インフルで受験生泣かすな 大学担当者も苦慮
2009年9月28日
広がる新型インフルエンザの感染に、大学が入試での対応に苦慮している。入試が本格化するのは来年になってからだが、受験生や教職員の感染防止や入試会場の確保、延期や追試をするかどうかなど、「どこまで対応すべきなのか」と、入試担当者の悩みは多い。受験生の努力を無駄にしないための対策を模索している。
■私大―延期・追試、会場確保に気もむ
病気で大学入試を欠席しても、多くの場合、受験生の「自己責任」として救済措置は取られてこなかった。
しかし、新型インフルエンザは別だ。ウイルスの感染力は強く、患者数も増えるばかり。今のところ、弱毒性だが、強毒性への変異も懸念されている。毎年、のべ約300万人が挑むだけに、大学側も自己責任で済ませられないのが実情だ。
立教大は入試に備えてマスク6万枚とアルコール消毒液を手配している。受験日に希望者へ渡せるようにするためだ。「マスクを無理強いはしないが、せきをしている人には着けてもらいたい」。東京と地方9カ所に受験会場を設ける法政大。榎本正利・入学センター長は「一番大事なのは、健康な受験生を守ること」と気をもむ。追試をするにも、欠席者の人数は予想ができない。「感染の動向を見守りながら、様々な事態を想定するしかない」という。
中央大の入試担当者はため息をつく。来年2月、都内3カ所のほかに札幌、仙台、大阪、福岡など地方会場9カ所で予定している一般入試が、どうなるか心配だからだ。
地方での入試は、主に大手予備校を受験会場として借りている。もし流行して、延期や追試をすることになった場合、「会場の確保が難しい」という。中大の場合、センター利用入試を除く志願者約5万5千人のうち、地方で約2万人が受験する。入学者確保の柱になっているだけに担当者は「心配だし、困った」と話す。
受験料返還や日程変更などを含めた対策を検討し始めたのは、全国で計約9万人が受験する関西大だ。安部誠治副学長は「入試に及んだ時の影響は非常に大きく、大流行した場合、会場に入れることの是非から検討しなければならない」と話す。
立命館大は08年度入試から、学校保健安全法で出席停止が定められたインフルエンザやはしかなどで欠席した受験生には、受験料を返還している。新型でも同様の措置を適用。さらに、追試や日程変更などができるかどうかを議論していくという。
もし、大流行で、試験が予定通り実施できなかったらどうするか。
ある都内の私立大の入試担当者は「実は、追試の準備を始めている。試験問題の用意が間に合わないといけないから」と打ち明ける。
名城大(名古屋市)の広報担当者は、いくつかの課題を挙げた。まず、新型にかかっていると認定する事務作業の繁雑さだ。さらに、入試が多様化していることで、出題の労力が大きくなっており、追試にも「単に試験回数を多くすればいいというものでもない」と悩む。
別の大学によると、実際、試験回数を増やすことが議論されたものの、「予備問題を今から作るには、教員の負担が大きすぎると猛反発を受けた」ことから、立ち消えになったという。
■センター試験―追試会増やす検討も
頭を悩ませているのは、私立大学だけではない。
毎年1月、約50万人が受ける大学入試センター試験。この時期に、新型インフルエンザが大流行した時に備え、文部科学省は、例年、センター試験本番の1週間後に実施している病欠者ら向けの追試験の会場を増やすべきかどうか検討し始めた。
来年の試験は、本試験が1月16、17日、追試験が1月23、24日に予定されている。試験を、国公私立の652大学、164短大が利用する。
追試験は、毎年、東京と関西の各1カ所で行われている。文科省によると、今年1月は両会場で計209人が受けた。追試験の受験者数は多かった年でも約900人で、例年なら、両会場とも数百人が受験できるスペースを確保していれば、十分だった。
ただ、今回は、追試験の受験者が急増することを想定する。事前に対策を考えておく必要があるとして、文科省は、追試験の会場を増やすべきか▽仮に増やす場合、いまの2会場からどの程度増やすべきか、についても内部で議論していく。
担当者は「現行の2会場では、病み上がりの地方の受験生に東京や関西へ出てくるように求めることになる。会場を増やすと決まってはいないが、増やすとすれば、どの程度なのかも検討中」と話す。各県ごと、または、ある程度の地域ブロックごとに会場を置くなど、様々なパターンが考えられるという。
■文科省―個別試験結成の対応も準備
文科省は、センター試験以外に、各大学の個別の試験を受験生が欠席した時の対応についても検討している。8月末、専門家を集めて会議をつくった。国公立大はもちろん、早稲田大や関西大など多くの私立大も「どんな方針を示すのか注目している。できるだけ早く示してほしい」と話す会議だ。
今の予定では、方針が示されるのは10月末。大学入試室は「受験生が不安を抱かずに、試験を受けられるよう準備を進めたい」と話す。
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