「年間新生児数45万人、人工中絶は35万件」

中絶は誰もが知っているが、口にはしない「不都合な真実」だ。韓国は年間35万件の人工中絶が行われている「中絶大国」(2005年保健福祉部調査による)。年間の新生児数45万人に劣らぬ数が、違法な手術により生まれる前に消えているのにもかかわらず、これが取り締まられたり、告発されたりすることはない。

女性は望まない妊娠の痕跡を消すため、あるいは胎児に異常があるという理由で、簡単に「中絶産婦人科」を訪れる。医師は「妊婦の意向」を理由に、または収入を得るためにこれをいとわない。

こうした中、若い産婦人科医が中絶根絶運動のために立ち上がった。30-40代を中心に産婦人科医約680人が加入する「心から産婦人科を考える集まり」(GYNOB)の医師らは、近く違法な中絶の中止宣言を対外的にアピールするとしている。産婦人科医の間で中絶根絶運動が本格的に展開されるのは初めてのことだ。

このニュースが伝えられると、産婦人科医師会のホームページでは大騒ぎになった。「業務妨害だ」という声や、「賛同する」という声が上がっており、さまざまな意見が飛び交っている。

GYNOBは正常ではない方向に流れつつある産婦人科の医療政策を正すため、若い医師が集まり、昨年12月に結成された団体だ。産婦人科開業医は合計約4000人いるが、そのうち約680人が参加しており、決して少ない数ではない。彼らは今後、中絶根絶キャンペーンを展開し、自浄努力と共に違法な中絶を行っている産婦人科医の告発運動も起こす方針だ。

この集まりの先頭に立っている産婦人科医3人が討論を行った。産婦人科医院を開業しているシム・サンドク院長(49)、チェ・アンナ院長(43)、そして匿名希望の産婦人科専門医A医師が討論に参加し、中絶に鈍感な韓国社会を告発した。

■中絶に鈍感

「インターネットのポータルサイトなどには、中絶手術をする病院の広告が堂々と出ている。妊娠した女性が主に夜、『中絶病院』を検索するのを利用し、夜のみ広告を出している」

「一部には妊娠中絶専門病院とアピールする産婦人科もある。中絶はますます企業化されている。企業型病院が中絶患者を奪っていくと妬む医師もいる」

「薬による中絶ができると宣伝しておきながら、抗ガン剤を妊婦に投与するケースも多い。子宮外妊娠など特殊な場合にだけ使われる抗ガン剤療法を、一般的な妊娠中絶にも使用しているものだが安全性が検証されておらず、危険をはらんでいる」

「政府が出産奨励のため妊婦に病院診察費として支給しているバウチャーカード(20万ウォン=約1万5000円相当)を、中絶を打診するための診察費用に使うこともある。国民の税金で中絶を支援することになるのだ」

「社会全体が中絶をとても簡単に考えすぎている。胎児の超音波写真で指が6本あることが判明すると、『中絶してほしい』と言われる。出産し、指の形成手術をすればいい話なのだが。一度手術すれば治る先天性心臓病の胎児も『おろしてほしい』と言う。『妊娠していることに気づかずに風邪薬を飲んだから』と言って、中絶に執着するケースもある」

「患者の中には司法試験に合格した女性や、検事の妻もいる。中絶できないと言うと、『診療拒否するの!?』と責める女性もいる。」

「人に隠して中絶するため、妊婦の体に対する危険性が十分にチェックされないまま手術が行われがちになる。よって、医療事故に至るケースもある」

■違法な中絶は両成敗されるべき

「違法な中絶を取り締まらないため、中絶しようとする妊婦も『中絶嘱託罪』で処罰の対象になるという事実を知る人は少ない。ほとんどの産婦人科医は『たたけばほこりが出る』犯罪者予備軍だ」

「1回30-40万ウォン(約2万3000-3万円)かかる中絶手術は、病院収益の大部分を占める病院も多い。病院のある一方では妊娠したいと不妊手術し、他方では妊娠中絶をしているのが韓国の産婦人科の現状だ」

「産婦人科医は、出産の診療報酬点数が低いため分娩(ぶんべん)室を閉鎖しなければならないなど、間違った医療政策のため不当な待遇を受けているが、中絶による『原罪意識』があるため政府に抗議もできない。中絶は産婦人科医にとって『毒入りキャンディー』だ」

「実はわたしも以前、中絶手術をしたことがある。そのため、職員や患者に脅されたこともある。違法な手術に目をつぶるから対価をくれというのだ。こちらに道徳的な欠如があったため、これまで黙っているしかなかった」

■「高妊娠・低出産」社会

「中絶手術の取り締まりをしても、母子保健法で例外として規定されている5種類の項目を準用し、ほとんどは起訴猶予や宣告猶予としてうやむやにされる」

「一部の女性団体は、『中絶は女性の幸福追求権』と訴えるが、どのような場合においても妊娠や出産により社会的差別を受けたり冷遇されたりしないようにするのが真の女性の幸福追求権だと思う」

「中絶しようとしている未婚の母を説得し、出産させるケースも多いが、10人中9人は出産したことを後悔していない。『ありがとう』と涙を流す。生命の誕生は便宜という物差しでは測れない。一方、中絶した後にうつ病にかかり、自殺を図る女性も見てきた。果たして、どちらが女性の幸せなのか、考えてみる必要がある」

「簡単に中絶できるため、まるで公式のように『未婚の母・胎児に異常があるなら中絶』となっている。米アップル社スティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)の母は未婚だった。先進国では自信にあふれた人生を送る先天性の障害者も多いが、韓国ではあまり見られない」

「政府や市民団体には一部の中絶を合法化しようとする動きがある。妊娠中絶認定病院や妊娠中絶相談制度の導入も検討中だという。『不都合な真実』から脱し、正々堂々としたいのだ。しかし、それでは現在の『高妊娠・低出産』状態を脱出することはできない。出産自体が得になる社会を目指すべきだ」

「まず、中絶手術を行う産婦人科医の反省と自浄努力なしには絶対に根絶できない。避妊教育の活性化や、やむを得ない場合は中絶を合法化しようという論議は、その次の問題だ」

キム・チョルジュン医学専門記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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