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男性の子育て:父親たちよ!目指せ日本一!! 多彩な取り組み /大分

◇さあ、新年から楽しくやろう

総務省の社会生活基本調査(06年)で男性の子育て・家事時間が36分と全国最低だった大分県。県は「男性の子育て参画日本一・おおいた」を旗印に施策を積極展開し始めた。「最下位から首位へ」。カギは民間会社の取り組み、そして個々のお父さんの意識だが、男性の子育てグループの活動は各地で盛ん。「さあ、新年から楽しい育児を」と提案します。
◇おやじの会、大分市西の台小「ととろクラブ」 設立10年迎える

大分市立西の台小学校区で、子どもや地域のために活動する同小PTA父親部「ととろクラブ」が設立から丸10年を迎える。県外から転勤した人の中には、父親部の評判を聞いて、この校区を選ぶ人もいるという。同小を子どもが卒業してからも参加可能。父親部の活動から、男性の子育て参加を進める秘けつを探った。

年の瀬も迫る師走のある日曜日。西の台小のグラウンドに、親子や地域住民など約130人が集まった。今年最後の活動日で、清掃活動などを終えた後、みんなで餅つき。ペッタンペッタンと杵(きね)をつく父親たちをぐるりと取り囲んだ子どもたち。「僕も」「私も」とせがみ、つき上がったまん丸の餅に目を輝かせた。

ととろクラブは2000年4月、「子どもたちや地域のために何かしたい」と考えた有志が集まって設立された。01年からは校庭に段ボールで家を造って親子で泊まる「ダンボールハウスキャンプ」を開催。02年からは親子で地域の清掃活動を、06年からは父親が自分の職業を取り上げ授業を行う「世界一聞いてもらいたいおやじの授業」も始めた。
◇自分が楽しむ

現在会員は約90人。「父親自身が楽しむ」がモットーで、活動の強制はしない。異業種の人たちと、酒を交えながら語りあえるのも大きな魅力だ。同小6年の息子と中2の娘を持つ部長の県職員、玉井光秀さん(43)は「楽しんで活動している親をみて、子どもたちも『大きくなったらお父さんのようになりたい』と思ってもらえたら」と話す。

課題は、参加者が固定化され、思うように会員が増えないこと。会員はPTA会員約730世帯の8分の1だ。活動は土日が多く、休日に仕事がある人は参加しにくい。また、関心がない人に参加する意識を持ってもらうのはもっと難しい。
◇地域全体で

それでも、元部長の県職員、井上桂太郎さん(50)は「僕らの世代は、職場を超えて同世代や地域とかかわりたいという気持ちはある。子育てへの抵抗感も薄れている」と説明。同小5年の息子と高3の息子、高1の娘を持ち、「子育ては楽しい。それを女性だけに独占させるのはもったいない」と強調する。

玉井さんも井上さんも、家庭では当たり前のように、子どもの風呂の世話やおむつ替え、食事のサポートなどもしてきた。それでも「妻の負担は大きい」(井上さん)とも感じている。

では、男女が協力し、子どもを育てやすくするにはどうすればいいのか。玉井さんは「昔は地域全体で子どもたちを育てていた。そのつながりをもう一度再生しようと活動している」と父親部の意義を説明。「夫婦だけで難しければ、地域や公的機関がサポートする体制があれば」と話す。そういえばこの日、餅つきを取り仕切っていたのは地域の元気なお年寄りだった。【高芝菜穂子】
◇父親部(おやじの会)

県内では、10年ほど前から、小中学校の校区単位で設立されはじめ、県PTA連合会によると、現在約160ほどあるという。PTA内の団体や、PTA外の任意団体もあり、名称に父親を冠していないものもある。大分市と別府市には、市内の父親部同士が情報交換をするネットワークがある。昨年11月には県内で、有志の父親部などにより「全国おやじサミットin大分」が開催された。今後も、県レベルでのサミットで、情報交換や親ぼくを広げる予定。連絡先は大分市おやじネットワーク(oitaoyajinet@yahoo.co.jp)
◇隙あらば娘と--記者・小畑英介(33)

08年9月17日、県教委汚職事件の取材に追われる中、長女が生まれ、初めての育児が始まった。意外と楽しいが、帰宅が連日深夜なので、かかわろうとすれば出勤するまでの朝の時間帯がすべて。「可能な時に可能な限り一緒に育児」を目指し、妻(33)任せの現状打開へ頭をひねっている。

平穏な朝は、ごみ出しに合わせ、抱っこして10分程度の散歩。朝食の後、風呂に入れる。余裕があれば絵本を読んだりするが、大体はそのまま出勤となる。夜は布団をかけ直すくらいで結局、育児時間は一日計40分ほど。「育児しているつもりが実は大したことない男」の典型例と言われても仕方ない。

仕事次第では、そんなわずかな時間もゼロに。そこで仕事の移動中におむつを買ったり、手の空いた夕方に自宅へ戻ることなどを試みている。24時間態勢で育児する妻の負担を軽減したいし、子どもにも接したい。困難な面もあるが、不規則な勤務で時間をひねり出す方法を考えるのが課題といえる。

寝込みの顔面に硬い本を落とされるなど痛い時もある。風呂場で泣きやまず、耳がキーンとし続ける午前もある。ただ、日に日に体、言葉や行動が成長する姿を目にする喜びは大きい。看病や部活動の移動など、振り返れば両親には世話をかけた。

育児日本一になれるか分からないが、今度は私が「隙(すき)あらば育児」の姿勢で、子どもにかかわる番だ。【小畑英介】

◇事業所 ユニーク休暇制度--安岐・特養ホーム「鈴鳴荘」

妻の出産に合わせた「とうちゃんがんばれ、パパ修行中」、孫の誕生時の「ばあちゃんの出番です」などユニークな有給休暇制度を持つ特別養護老人ホームが国東市安岐町にある。

社会福祉法人「安岐の郷」が運営する鈴鳴(れいめい)荘。09年春からは松寿園(同市国東町)など計4施設態勢に。鈴鳴荘には託児所もあり、職員の子だけでなく、地域住民の子もおり、同じフロアの高齢者らと日々遊ぶ。総合施設長の高橋とし子さん(54)は「職員も安心して働け、高齢者も若い気持ちを保てる。地域の方もボランティアに来て下さる」と複合的効果に胸を張る。

子育てと仕事の両立の積極支援は、04年、ベテラン女性職員が「孫の面倒をみるため退職したい」と申し出てきたのが契機。「貴重な戦力が退職せざるを得ない職場でいいのか」。自問の末、05年に独自の休暇制度を創設。学校の長期休みには子ども同伴勤務を奨励し、今年度からは幼稚園へのお迎えを勤務時間に算入している。

こうした流れを受け、「パパ修行中」(5日間)の取得例も出始めた。岩尾昌次郎さん(36)は今年5月、2子の長女胡実(くるみ)ちゃんの誕生後、18日間の育児休暇と合わせて23日間の休みを取った。早産で妻節子さん(38)に安静が必要となり、買い物や長男洋之介ちゃん(5)の幼稚園送り迎えに、助かったという。岩尾さんは施設では託児所のほか、介護タクシー業務や配食サービスにも従事。他の職員も多様な業務をこなす。お互いの仕事をカバーすることができ、休暇の取りやすさにもつながる。

一連の制度導入後、職員2人が復職し、職員の家族3人も職員になった。「働きやすい職場だからこそ、多くの人が門をたたいてくれる」と高橋さん。昨冬の「非正規社員切り」で工場を追われた10人も働く。家族のようなきずながそこにある。【梅山崇】
◇県 あの手この手で応援 本庁「パパ退庁日」設定

「男性の子育て参画日本一・おおいた」は広瀬勝貞知事が09年3月に提唱。中小企業対象に最高20万円助成する「男性子育て参加応援企業」を募り、3社が応募。社内研修や親子イベントなどを実施している。「パパの子育て後押しキャンペーン」も展開。年末からラジオのスポット広告を流し、子育て応援シンボルマークも決定。佐伯、日田、豊後大野など各地で子育てトークセミナーも開いている。

総務省の社会生活基本調査で男性の子育て・家事時間が36分、08年度末の市町村調査でも、「夫も妻も等しく子育てするのが理想」と答えた人のうち、「実現できている」は36・2%だった。05年3月に定めた5年間の次世代育成支援行動計画(おおいた子ども・子育て応援プラン)も改定中。「男性の家事・育児時間を36分から14年には105分にする」との評価指標を設ける。

一方、「まずは県庁から範を示そう」と、毎月第3水曜を「子育てパパ退庁日」に設定し、3歳未満の子どもがいる男性職員は午後3時に仕事を終える試みを09年9月から本庁で始めた。

10月までの2カ月間で対象244人中、利用したのは23人と1割に満たず、92年に始まった育児休業制度も、男性では04、06、07年に2~3カ月利用した職員が1人ずついただけ。人事課は8月に庁内アンケートを実施し、「男性の育児休暇取得を推進すべきだ」が8割に達したものの、実態がなかなか伴わないのが現状だ。県は在宅労働の7月導入も検討。あの手この手で結果を出そうとしている。【梅山崇】
◇知事 ルール、規範学ばせる父性--広瀬勝貞氏(67)

「男性の子育て参画日本一を目指す」と反転攻勢を宣言した広瀬勝貞知事(67)は「(全国最低)36分はきっかけ」と言う。「子どもの健やかな育ちには父親の参画が不可欠」。信念を実現させるのに、最も良いタイミングだったようだ。

「しっかり抱き、降ろし、歩かせるのが子育て。親子の一体感を深める母性と、ルールや規範を学ばせる父性の両方で接することが大事」と語る。現在37~25歳の4子がおり、通産省(経産省)の官僚時代も激務の中、朝食だけは一緒に取り、しっかり子の話に耳を傾けた。そうすれば妻とも子どもの話が通じ合う。いま、アンケートなどで浮かび上がるのが、子育て中の母のイライラ。悩みや思いが共有できれば、母が元気になる。それが子どものためにもなる。

「言い出しっぺの県が率先して取り組まないと、機運が広がらない」と導入した「子育てパパ退庁日」。従来からある育児休暇と合わせて利用率は低調だ。「仕事の忙しさ、家計への影響、専業主婦の多さなど理由はいろいろあれど、『休んだら職場に迷惑をかける』という意識が一番大きい。上司の理解を広げ、課単位でなく、部単位でカバーする仕組みにすれば、心理的抵抗も低くなるはず」と改善策を口にする。同じ仕事を複数の人間がこなせる態勢も考えている。

「36分」は子育てと家事の合計時間。子育てを終えた知事だが、家事は? 「私専属の家事は、自宅に来たお客さんへの酒の用意だけだが、食事中、妻からコーヒーいれてとか、果物洗ってとかいろいろ言われ、粛々とやる。皿洗いもね」 【梅山崇】

なかなかの数字だね。86%の男性が「育児休暇」を取りたいって答えてる。ところが「育休切り」にあったりするからそんな制度があったとしてもまず取れない。と言うのがホンネかな。こちらは働きながら子育てしてる女性の話だと思うけど、いざと言う時には「近くに住んでいる両親に預ける」人が73%。かくして近くに親がいない若い夫婦は「保育難民」と化す。

男性の育児休暇「取りたい」が「環境が整っていない」7割超

男性も「育児休暇を取得したい」 86.2%

「育児休暇の取得」について問うと、男性(500名)のうち、86.2%の回答者が「取りたい」と回答した。休暇取得のための社会環境については、「整っている」が14.6%、「整っていない」が71.6%となった

女性(500名)の場合は、94.6%が「取りたい」と回答。取得環境について、「整っている」が16.2%、「整っていない」が78.4%となった。

性別問わず育児休暇について高い関心を寄せているが、環境が後押しできていない状況が読み取れる。
「保育園不足」を感じている人 74.3%

調査対象のうち、保育園に通う子どもを持つ253名に対し、保育園不足を実感することがあるかどうかを尋ねたところ、74.3%が「実感することがある」(「実感することがある」45.8%、「やや実感することがある」28.5%の合計)と回答した。

幼稚園に通う子どもを持つ278名のうち、「実感することがある」と回答したのは、35.6%である。

「子どもが病気でも仕事が休めない」多数経験

保育園や幼稚園に通う子どもを持つ524名に対し、「子どもが病気だけれども、仕事は休めない」や、「どうしても外せない外出の用事がある」といった経験を問うと、「経験がある」と回答したのは、保育園に通っている子どもがいる(253名)の場合80.6%、幼稚園に通っている子どもがいる(278名)場合では、60.8%となった。

こうした場面で、どう対応をするのかを複数回答形式で聞いたところ、「近くに住んでいる両親に預ける」が72.9%ともっとも多く、次いで「病児保育施設・サービスを利用する」16.8%、「近くに住んでいる友人に預ける」15.8%という結果になった。

今回の調査結果を受け、病児・病後児保育サービスを提供するNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹氏は「共働き世代にとってもはや保育インフラの有無は死活問題になりつつある。『保育難民』溢れる現状は、労働人口減少に拍車をかけ、悪い経済状況を更に悪化させる」(一部抜粋)とコメントを寄せている。