Archive for 2009年4月1日


先生にとって最初のモンスターは小学1年生だったか。従来それほど問題にならなかったことがだんだんと深刻になっている例はたくさんあるけど、その典型かな。そこで逆にこんな問いをしてみよう。「なぜこれまでの小学1年生は授業中きちんと席に座っていたのか」。

そういやうちのばあちゃんが登校前のおいらに叫んでいたことを思い出した。学校へ行ったら先生の話を1から10までちゃんと聞くんだよ、と。耳にタコができるくらい何度jも何度も聞かされた。些細なことだけど、こんなことが減ってきたのかな。

歩き回る、教室出て行く こんな小1増殖「授業にならない」

2009/3/30

授業中に席に座っていられず、歩き回る、教室を出て行く。こんな落ち着きのない小学1年生が増え、「1学期は授業にならない」という深刻な状況が生まれている。自由に振る舞える保育園、幼稚園に比べて小学校は決まり事が増え、環境の変化が大きいことが原因の1つだと言われる。保育園、幼稚園と小学校が連携し、入学前に集団生活を身に付けさせる取り組みも始まった。

「自分コントロールする力」身に付けないまま入学

東京都品川区教育委員会の指導課課長は、    「授業中に自分の席に座っていられず歩き回る、勝手に教室を出て行く子供が増えていて、現場は深刻な状況です。1学期は授業にならないですよ。先生次第では、2学期以降も(このまま)なんてことも・・・」と頭を抱える。

小学校に入学したての児童が落ち着かず、授業が成立しない問題で、「小1プロブレム」と呼ばれる。1990年代半ばから全国で報告されるようになった。
好きな場所に座り、自由にトイレに行ける保育園、幼稚園に対し、小学校では決められた席に座る、授業中は席を立ってはいけない、などの決まり事が増える。環境の変化が大きいことが原因だと言われている。

「この10年で、問題行動を起こす児童が増えていると感じます。相当まいっている先生もいます」と明かすのは、小学校で「スクールカウンセラー」として活動している宇都宮大学教育学部青柳宏准教授だ。

しかし、小学校に上がり環境の変化に戸惑うのは今に限ったことではない。では、なぜ問題化しているのか。
青柳氏は、原因の1つとして、少子化で集団で遊ぶ機会が減り、本来は喧嘩を通して学ぶ「自分をコントロールする力」を身に付けないまま小学校に上がる子供が増えたことを挙げる。もう1つは家庭内の問題だ。    「経済状況が厳しくなっている今、親が子供の相手をする余裕がなくなっています。話を聞いてもらえない子供はストレスを抱え、問題行動につながるんです」

幼稚園と小学校、教師間交流も進む

環境の変化、家庭内の問題など、いろんな原因から「小1プロブレム」は起こるようだが、幼稚園、保育園と小学校が交流し、入学前に集団生活を身に付けさせようとしている。

文部科学省と厚生労働省は2009年4月から保育所保育指針と幼稚園教育要領を施行し、小学校との連携を推進する内容を盛り込んだ。

すでに交流を進めている県もある。2000年度からモデル地域を指定し、幼保・小一貫指導を推進している山口県。交流を体験した小学校の教師のコメントが「保育所や幼稚園等と小学校における連携事例集」(文部科学省、厚生労働省)に紹介されている。

「幼児教育の現場に触れ、子どもの立場に立った指導の実際がよく分かった。否定する言葉は極力使わず、ほめ励ますことがとても効果的に働いているのを見て、今までの自分の指導の在り方を反省させられた」

別の教師も、    「子どもたちは、遊びからたくさんのことを学んでいる。その遊びの要素を小学校低学年の授業に取り入れるなどして、幼児教育から小学校への滑らかな移行を図りたい」と書いている。

ほかにも自治体によって体験入学させたり、入学前に児童と保護者の交流を行ったりしている。いずれも幼稚園、保育所が主体になっていることが多い。

東京都品川区教育委員会は「幼保・小1貫教育のプログラム」を作り、2010年度の導入を検討している。前出の指導課課長によると、小学校側に積極的に取り組んでもらうことが狙いだ。
共同でドッジボールや合奏などを体験させ、集団生活のルールを教えるほか、小学校の教師が幼稚園に行き、簡単な読み書きや算数を教えることも計画している。

こんな時代が来るとは思いもしなかったね。その気になればネット上で何だってできる時代がそこまできているよ。英語ができりゃ世界一級の大学講義だって受けられる。ますます英語偏重の時代になるのかな。

YouTube,全米大学の講義ビデオを集めた「YouTube EDU」を開設

Google傘下のビデオ共有サービス「YouTube」は米国時間2009年3月26日,サイト内に全米の大学の動画コンテンツを集めたサイト「YouTube EDU」を開設した。講義の録画や学校紹介など,各大学が公式に投稿した多量の動画を閲覧/検索できるようにしている。

マサチューセッツ工科大学,イェール大学,スタンフォード大学など,全米の100以上の大学の講義チャンネルの動画を1つのサイトに集約した。大学別の動画一覧や,再生回数が多い動画,チャンネル登録が多い動画を検索できるほか,同サイト内だけを対象とする検索も可能である。

YouTube EDUは,さまざまな大学が投稿した学術系の動画コンテンツを集約したいと考えた同社社員らが自発的に立ち上げたプロジェクトという。同社の公式ブログには,「学問を民主化するための媒体としてYouTubeを利用するという使い方は,予期していなかった素晴らしい成果だ」との声明が公開された。

併せて同社は,動画投稿時に処理の進ちょく度をグラフ表示するプログレス・バー,高画質動画への直接リンク,ミニブログ・サービス「Twitter」への投稿など,複数の新機能をYouTubeに追加している。

スウェーデンと言えば、「高福祉社会」「学力高位国」と言うイメージだけど、それがけっして偶然じゃないことが今回のニュースでわかったね。それにしても最大の外貨収入源が音楽だとは知らなかった。ABBAぐらいしか思いうかばないもの。どんなに不況になっても教育への投資は減らさないという一貫した政策は日本も見習ってほしい。残念ながら、今の政治家たちに「百年の計」を求めるのはしんどいけどね。

教育改革で「知識社会」へ転換  スウェーデンの生涯学習(前編)

「スウェーデンの最大の外貨収入源となる産業は何だと思いますか?」

過日、聖心女子大学で開催された講演の壇上から、モハメッド・チャイブ教授(ヨンショーピン大学教授/スウェーデン全国生涯学習センター「ENCELL」所長)は聴衆に問いかけた。

誰もがボルボやエリクソン、エレクトロラックスといった企業名を思い浮かべた時、意外な正解が明かされた。
モハメッド・チャイブ教授。教育分野におけるEUの政策、知識社会で生涯学習制度の抱える矛盾などにも言及された。

モハメッド・チャイブ教授。講演では教育分野におけるEUの政策、知識社会で生涯学習制度の抱える矛盾などについても語られた。

「スウェーデン最大の外貨収入源は音楽産業なのです」

確かにスウェーデンポップスは1970年代にアバの大ヒットがあっただけでなく、独特で新鮮なイメージを世界に発信しているし、最近のミュージカル映画でもアバ人気は再燃している。それに、北欧のジャズシーンは世界の注目を浴びて久しい。教授は、欧米のミュージシャンがスウェーデンで行うPV撮影による収益も膨大だと言う。

「工業社会」から「知識社会」へ

「重工業は国を代表するイメージが強いですが、企業が大きくなれば工場を低賃金で勝る海外に移さざるを得ません」(チャイブ教授)。転出した国で雇用、製造し納税するのだから一昔前とは“国産”の意味も“国益”の本質も変わってきている。グローバル化の中で、コンパクトに最大の外貨の獲得できるのは知的・文化的産業、というわけだ。

「これからの時代を担う知的産業の基礎となるのが、人が生涯を通して必要に応じて学び続けることを推進する生涯学習社会なのです」(同)。

大量生産・大量消費、工場設備や低賃金労働によって支えられてきた「工業社会」から、資源の持続可能性を基本とした生産・消費、知的労働よって支える「知識社会」へ向けて、スウェーデン、北欧、そしてEUは大きく舵を取っている。

生涯学習とリカレント教育

「生涯学習(Lifelong Learning )」とは、1965年にフランスの教育学者ポール・ラングランがユネスコで提唱した概念だ。第二次大戦の戦禍を被った国々がほぼ復興を終えたその時期、ラングランは、19世紀末から醸成されてきたヨーロッパの民衆教育の理念(詳細後編)を発展させて、人が生涯学び成長し続けていくことの重要性を説いた。
ヨンショーピン大学、教育・コミュニケーション学部にスウェーデン政府の予算によって2001年に開設された「全国生涯学習センター」。生涯学習の可能性、戦略、社会にもたらす影響など、あらゆる分野を研究している。

ヨンショーピン大学、教育・コミュニケーション学部にスウェーデン政府の予算によって2001年に開設された「全国生涯学習センター」。生涯学習の可能性、戦略、社会にもたらす影響など、あらゆる分野を研究している。

ところが、第二次大戦に参加しなかったスウェーデンは(*1)復興にエネルギーを取られる必要がなかったため、60年代初頭から民衆教育の理念を具体化した「リカレント教育(Recurrent Education)」(*2)を発案し、振興策を取っていた。

Recurrentとは「回帰」を意味し、政策は「誰もがそのライフステージに応じて労働から学びの場へ回帰、循環できる社会」を目指して進められた。

1965年に成立した、25歳以上で4年以上就労している社会人の大学入学を推進する「25-4制度」(*3)や、74年に成立した、労働者の就学休暇と仕事復帰の権利を保障した「教育休暇法」(*4)は、リカレント教育政策の中で生まれ、現在も活用され続けている。

充電(学習、休暇、育児など)を労働と等しく尊い社会活動とし、人々がその両輪で人生を歩んでいくことを推進してきたスウェーデン。旧来の「工業社会」から「知識社会」へ転換は40年以上の長い年月の中で準備されてきたとも言える。

知識社会のステイタス

ところで、社会が「知識社会」へと転換した時、私たちの価値観はどのように変化するのだろうか?

これについて、スウェーデンの社会システムに詳しい神野直彦教授(東京大学経済学部・大学院経済研究科教授)は、「従来の工業社会が、家や車など、もの を手に入れたいという“所有欲求”に突き動かされて成り立っているのに対して、知識社会では、自らの存在価値を見出したい、人とつながり、社会に貢献した い、という“存在欲求”がモチベーションになります」と言う。

神野教授は財政学が専門で、地方分権を旨とするドイツ財政学を通してその好例であるスウェーデンと関わるようになった。90年代には、彼の地で地方自治と財政システムが教育に及ぼす影響を目の当たりにしてきた。

「スウェーデンの地方自治のあり方は、ヨーロッパの自治憲章(1985年)想起の参考にされているほど優れています。

知識社会の根本になるのはいわゆる学校教育だけでなく、社会に出た後でも必要に応じて学び足したり、職業的に新たな技術や知識を得るための成人教 育です。その礎になるのが、生涯にわたって教育や医療や福祉といった公的サービスを行う地方自治と財政のシステムなのです」(神野教授)。

合理的増税で財政再建・先見的投資で景気回復

1989年のソ連崩壊から90年代にかけてヨーロッパは深刻な不況に陥った。日本では“失われた10年”と言われるこの時期、スウェーデンも財政難、失業問題を抱えることになった。しかし、リカレント教育政策の歩みは止まるどころか躍進している。

「彼らは、不況だからこそ教育改革、ITインフラの整備、環境問題対策、福祉サービスの充実に投資したのです」(神野教授)。

スウェーデンには政治が運営する教育機関として、「基礎学校(小・中学校)」、「後期中等学校(高校)」、「高等教育機関(大学)」という、いわ ゆる学校教育の機関と、社会人を対象にした義務教育の再教育と職業訓を行う「成人高等学校」(komvuks コンブックス)という成人教育の機関がある。

税制改革を行い、所得税と法人税の引き下げとともにグリーン税制(温室効果ガスの排出量によって課税)を導入し、実質的な増税で得た財源が、それら教育分野ほか各分野に投入された。

「スウェーデンは、歳出の削減と増税で財政を再建し、適所への投資によって景気も回復させ、しかも税制で環境問題への対策の道筋までもつけたのです」(同)。

不況だからこそ教育に資本投入

不況下にも着々と進行した教育改革は、教育法改正による義務教育の拡充(*5)、後期中等教育(日本の高等学校)における自治体の責任強化、大学法改正によるカリキュラムの充実など、“学校教育”の場で行われるだけでなく、“成人教育”の場でも行われた。

1997年から2001年までの5年間、政府は社会人の学びを支援して「知識向上プログラム」を実施した。これによって各自治体は、成人高等学校の定員を大幅に増加させ、失業者への再教育を含めた職業訓練を実施することで職業転換を促すなどの責任を負うことになった。

この施策は低賃金労働から知的創造的労働への転換を推進するものとして相応の成果を上げた。そして30年以上前に制定された「教育休暇法」や 「25-4制度」、すべての教育の実質無料を実現している奨学制度(*6)は、今後、新たに生じる社会の二極化(教育を受けた人と受けなかった人)を公平 化へと向かわせる役割をも持つと期待されている。

こうした政策の成果は日本の関係者の間では周知のことだ。しかし、現在も日本ではそれに習うのは困難だと言われている。なぜ困難なのか? そして、なぜスウェーデンにはそれができたのだろう。