Archive for 2009年7月24日


変わる宿題

【教育】消えるドリル帳、ネットも活用 変わる夏休みの宿題
2009.7.19 18:31

夏休みの宿題が変わってきている。ドリル帳や作文、図画工作など定番の宿題を出す学校の一方、全国学力テスト上位の秋田では苦手や興味に応じて毎日計画を立てる家庭学習ノートを活用する学校もあり、学力アップの“秘密”のよう。またインターネット上には手軽にできる自由研究や有料で作文を書いてくれるサイトまで登場している。

ドリル帳

40代後半の記者の場合、小学生時代の夏休みの宿題は、国語、算数、理科、社会4教科のドリル帳のほか、作文や毎日の天気、絵日記、工作…。8月末にあわててやった。

最近は民間業者の市販ドリル帳を使わなくなった学校もある。秋田県のある中学教頭は「市販ドリルは教科別に工夫され色もきれいだが、学力の高い子にはもの足りず、学力に課題がある子には負担。10年ほど前からか使っておらず、日々の授業を担当する教師がプリントをつくる」という。

秋田の秘密

全国学力テストでは学校外での学習などと学力との関係も分析され、夏休みの宿題などをきちんと出している学校の学力が高い。秋田県では夏休みの宿題などを出す学校の割合は全国平均より小、中とも10ポイント以上高いという。

秋田県のある小学校では「特に変わったことはしていない」という一方で、学期中の日頃から大学ノートを家庭学習ノートとし、児童が毎日、漢字や計算練習など自宅で行う計画を記入、宿題として実行している。夏休み中もこのノートを使い、平均で1日2ページぐらい勉強する。

また別の中学教頭は「夏休みに入る前に担任と生徒が苦手分野など相談し、夏休みの課題の計画を立てる。多すぎても続かない。1日の課題はA4プリント1枚裏表程度。継続が大切だ」と話す。

感動を

平成10年の学習指導要領改定で導入された総合学習や、パソコンを活用した「調べ学習」の推進などの影響で、ネット上には簡単にできる自由研究や理科実験などを紹介するサイトが目立っている。

また作文の添削のほか、学年などの項目を記入すれば、“プロ”が400字詰め原稿用紙1枚5000円程度で作文を書いてくれるというものまで登場している。

TOSS(教育技術法則化運動)代表の向山洋一さんは「インターネットを活用することは悪いことではないが、そのまま印刷して持ってくる子供、それを認めてしまう教師もいる。ネットの情報は(1)公的機関の調査か(2)発表年度は(3)内容を理解しているか-を踏まえ、情報を分析する視点を指導する必要がある」と指摘する。

向山さんは印象に残っている子供たちの宿題があるという。中学受験を控えた小学生の男子は何度も海岸に通ってウミウシの自由研究をまとめ、母親も海辺で見守った。またある女子児童は旅行で出合ったものや体験をノートに記録。家族5人で東海道を歩いた子もいた。子供がいかに熱中するか、家族との体験も貴重だという。

向山さんは作文を例に「9割の子は朝からあったことを順に書きがちだが、(1)感動したことを書く(2)感動した頂点のことから書き出す-この2つが秘(ひ)訣(けつ)」とアドバイスする。

5歳から始める「スイスのボーディングスクール留学」(前編)
2009/07/10(金) 18:55

英金融大手HSBCは6月17日、アジアの富裕層を対象とした留学に関するアンケート調査結果を発表しました。それによると、中国の富裕層の82%が子供を将来的に海外に留学させる計画を持っていることが明らかになりました。
調査によって判明した子供の留学を検討している家庭の割合は、中国が82%、マレーシア75%、インド70%、台湾50%、シンガポール45%、日本 17%。日本は17%で6番目に多いという結果でした。アジアの富裕層にとって、海外留学はもはや当たり前のことであり、今後も海外志向はますます進んでいくものと考えられます。

またこの調査は富裕層へのアンケートですが、世界の留学生の数としても、実際中国人が最多です。これは留学生の数はその国の経済状況がダイレクトに反映されるためで、バブルの頃は日本人の数が多かったそうですが、今は減少しています。

1973年の創業以来、約6500人の留学生を海外に送り出してきた株式会社海外教育コンサルタント(EDICM)によると、日本では海外留学する子供の増加に加え、低年齢化が進んでいるといいます。創業当時は中学・高校生からの留学が普通であり小学生の留学は考えられなかったそうですが、1980年代後半から状況が変化。小学校5~6年生から海外のジュニアボーディングスクールへ入学する子供が増加してきたそうです。

■ボーディングスクールで始める「低年齢留学」

今でこそ「低年齢留学」という言葉は一般的になりつつありますが、実はこの言葉は約10年前から出てきたものです。この言葉を世間に浸透させたのは、現在「FESスイス留学センター」の所長を務める若草まやさん。本業は医師ですが、医師の仕事の合間をぬって「低年齢留学コラムニスト」として多方面で活躍されています。ご自身の2人のお子さんをスイスに留学させたノウハウを書いた『5歳6歳スイス留学大作戦』(かんぽう)は、子を持つ多くの親に衝撃と影響を与えました。
今回、「スイス」と「低年齢」の2つのキーワード軸に、若草さんにボーディングスクールについて語っていただきました。

■5歳・6歳でスイスに留学させたのはなぜ?

―若草さんのお子さんは、スイスのどのようなボーディングスクールに進学されたのですか?
「5 歳と6歳の2人の娘を一緒に、スイスの『ラ・ガレン』に入学させました。4歳から13歳までの子供を対象とした定員約80名の小さなボーディングスクールで、2人はそこで3年間を過ごしました。ジュネーブから100キロ以上離れたアルプスの中腹、標高1200メートルにあります。」

―5歳と6歳というと送り出す方も不安が大きいと思いますが、なぜこの年齢で留学させようと思ったのでしょうか?
「実は、夫は子供が生まれた直後から、ボーディングスクールへ留学させることを決めていました。夫は麻布出身でしたが、日本のお受験に懐疑的だったのです。上の子が日本の小学校に入学してみて、夫はあらためて失望の念を大きくしたようです。私たちが子供の世代の教育に求めていたものは、発想力や創造力、暗記した知識でなく論理に基づく思考力、問題発見能力などです。しかし日本の学校ではそれらの能力を獲得できると思えず、海外の学校を考えるようになりました。」

―なぜスイスで、他の国ではなかったのですか?
「低学年専用のボーディングスクールをさがしたら、スイスにしかありませんでした。しかも5歳から入れるのはスイスでも3校のみ。イギリスにも1校ありますが、それは男子校です。」

■低年齢留学では、語学力は「副産物」

―低年齢で留学するメリットは何でしょうか?
「まず1つのメリットとして、低年齢ならではのコストパフォーマンスの良さがあります。そもそもスイスのボーディングスクールは学費が高額なことで知られていますが、その中にあっても大きい学年になるほど学費が上がる傾向があります。ラ・ガレンの学費は年間約450万円で、それにユニフォーム代やショートトリップ代、往復渡航費などもろもろ含めると年間の総額は600万円前後になります。しかし中学校・高校からのスイス留学だと年間800~1000万円くらいは覚悟する必要があります。」

―小さい時に留学すれば、語学力が自然につくということも大きなメリットですか?
「留学というと、日本人は語学力を目的と考えがちですが、低年齢留学においては、語学力は目的というより副産物です。低年齢だとお友達ができるのが早いせいもあり語学力はすぐについてきますし、入学時に語学力を要求されないので、最初からアカデミックな面を重視して入りたい学校を選択できます。それに比べて、高校生など高学年での留学はどうしても語学力自体が目的になってしまいがちです。アカデミックレベルの高い学校はある程度の語学力が求められるため、入れる学校も限られてしまいます。」

―なるほど。語学力がなくても好きな学校が選べるというのは、新鮮な観点でした。
「それが、低年齢留学の最大のメリットです。低年齢なら語学力はコミュニケーションを通して自然に身につくので、語学習得のためだけの余分な留学期間を費やす必要がありません。小学生が終わった段階で、英語やフランス語で年齢相応のスピーチをしたりエッセイを書いたりすることは普通にできるようになっています。また、英語やフランス語だけでなく、スイスにはロシアやスペインなど多くの国の生徒が集まるため、様々な国の言語や文化に触れることができますよ。その後の進路もグローバルな視点で選べるようになり可能性がグンと広がります。」

■寄宿舎のバックアップ体制は?

―低年齢の寄宿舎は、生活面が不安だという親御さんも多いと思われますが?
「そうですね。でも母親代わりになって、やさしくこまやかにお世話してくれる人が寄宿舎には住んでいます。毎日の服の整理や髪の手入れ、お風呂など日常全般に渡って手助けしてくれます。最近は働くお母さんも増え、日本で子供と同じ屋根の下に住んでいても目が行き届くとは限りません。低年齢向けボーディングスクールの寄宿舎は、生活面はきっちり管理してくれるので、その点ではむしろ安心です。」

―ホームシックにはなりませんか?
「ホームシックは何歳で出しても不可避なものですが、低年齢だと適応力があり乗り越えやすいのか子供はすぐに慣れるようです。それに引き換え、親はすごく寂しいですよ。親が寂しいことと教育費の負担が大きいこと、これが低年齢留学のデメリットです。でも、ボーディングスクールの親業は一度やればハマります(笑)。子供が自分とは全く違う充実した学校生活を送っている、それも、ワクワク楽しそうに! お金はかかりますが、親にとってはまるで別の人生を1から生き直しているかのような喜びをもたらしてくれるメリットがあり、エキサイティングな経験です。子供たちも明るくのびやかに成長してくれましたし。」

―寄宿舎生活で身についたことは何でしょうか?
「規則正しい生活とサバイバル力です。しっかりセルフコントロールができる子供になって帰ってきました。毎日当たり前のように勉強するし、本を読む習慣がついています。家で親が先生の役目を兼ねずに済むので、親子関係も良好になります。また勉強だけでなく、ボーディングスクールではお稽古事も学校内で完結します。バイオリン、乗馬、スキーなど、様々な習い事をさせてもらえます。自分の家から通わせるとしたら手間が大変ですし、時間や費用もかかります。生活全てを任せているからこそ、ここまでしっかり面倒をみてくれるのです。」