関西の「ブランド」私立高、生徒集め四苦八苦
2009年7月30日

私立高校の入学者数が落ち込むなか、連携した有名私大へ一定数の進学枠を持つ関西の私立高校も生徒集めに苦戦している。少子化に加え、不景気による私立離れが影を落とし、今春、定員割れが目立った。夏休みは中3受験生が学力を伸ばし、進路を真剣に考え始める時期。各校は有名私大の「ブランド」力を生かし、地域との連携づくりで巻き返しを図る。

「早稲田大と一緒になってどんな学校を作るのか伝えきれず、反省しています」

大阪府茨木市の早稲田摂陵高校で6月30日、学習塾を対象にした入試説明会が開かれた。早稲田大常任理事で、4月から派遣された藁谷友紀(わらがい・ともき)校長が約250人の進路指導担当者らに、こう語った。

同校は今春、早稲田大の「系属(けいぞく)校」として「摂陵」から校名を変更、毎年40人が同大へ進学できる推薦枠を設けた。旧摂陵高校は大阪府内で中堅の男子校だったが、近年は受験生が減り、08年度には数十人の定員割れが出た。早稲田大との連携は立て直しの切り札になるはずだった。ところが今春、245人の外部募集に対して、出願者は35人。入学者はわずか11人だった。併設中学から内部進学した生徒と合わせても入学者は76人にとどまった。

私立高校と有名私大との連携が盛んになったのは数年前からだ。少子化のなか、安定して生徒を集めたい大学と、有名私大に推薦で進学できる枠を拡大して受験生を増やしたい高校の利害が一致した。

しかし今、私立にとっては「冬の時代」だ。08年度の全国の私立高校の入学者は約34万3500人で、前年度より約5千人減った。年々減る傾向にあり、5年前と比べて約1割減だ。特に橋下徹知事が私立高校への助成金を1割カットした大阪府では、府内全94の私立高校の入学者は09年度、4年ぶりに前年度より約1400人減り、過去最低の約2万7800人だった。50校が今春から授業料を値上げしたことも影響した。早稲田摂陵高校も、年間52万円から68万円に引き上げた。

同校は早稲田大の中竹竜二・ラグビー部監督や飛行ロボットの研究者らを招いて月に1~2回、一般住民も聴講できる公開講座を開催。藁谷校長は「地域への早稲田ブランドの浸透を、巻き返しの柱に据える」と話す。

大手塾「第一ゼミナール」を運営するウィザス(大阪市)の稲葉雅也・企画情報室課長は「関西は国公立大志向が強い。京大や東大を狙える学力づくりを目指していることをPRしないと、来年度も苦戦するだろう」とみる。

立命館大学と提携して今春から「立命館コース」を設けた初芝立命館高校(旧初芝高校、堺市)でも、240人の募集に対して出願者は126人、入学者は96人にとどまった。同コースに入学できれば、大半が立命館大に進める仕組みだが、「変わる初芝の姿をPRしきれなかった」という。来年度入試に向け、秋から近畿各地で説明会を開催するほか、立命館大教授の講義など独自のカリキュラムを設ける予定だ。

関西学院大の提携校、啓明学院高校(神戸市須磨区)は今春の入学者から、希望者全員が関学に進学できるようにした。しかし、80人の定員に対して入学者は38人だった。受験生の中学時代の成績を、9教科の5段階評価で計37以上を受験資格にするなど基準を高く設けすぎたことが低迷の原因と、入試担当者は分析。「それだけの学力があれば、難関公立高から、国公立大を狙った方が学費も安く済むと判断する保護者が多かったのでは」とみる。しかし、生徒のレベルにはこだわり、受験資格を変えるつもりはないという。(小河雅臣)