若者の「便所飯」なぜ… 1人になりたい 独りぼっち怖い
産経新聞2009年7月24日(金)08:05
「便所飯(べんじょめし)」という言葉がインターネット上で飛び交っている。学校や職場など、公共のトイレで食事をする現象が一部の若者の間でひそかに広まっている。「都市伝説」との見方も広まるなか、実際に「便所飯」を経験した女性に話を聞いた。何が若者をそこまで追い込むのか-。(宮原啓彰)
■「私は逃亡者だった」
「僕は学校ではトイレで弁当食べてます」。ネット掲示板「2ちゃんねる」には、便所飯に関するスレッドが乱立し、体験談も書かれている。一方で「(便所飯は)都市伝説だ」と主張する書き込みもあり、議論が続いている。
「高校生のころの私は逃亡者だった。便所飯を『都市伝説』という人はそういう気持ちになったことがない人だと思う」。こう語るのは、千葉市の会社員の女性(22)。
女性によると、便所飯には、「集団から自ら離れて1人っきりの時間がほしいタイプ」と「集団に入れず無視されているタイプ」の2つのタイプに分かれるという。女性は前者だった。
「高校はどこも人の目ばかり。1人になれるのは昼休みのトイレしかなかった」。女性の“食堂”は職員用トイレ。「きれいだしにおいもない。何より人がめったに来ないから」。周囲にばれないよう、栄養補助食品など、においや音が出ないものを食べた。
■「禁止」の落書きも
横浜国大や早大などでトイレ内での食事を禁じるビラや落書きが男子トイレで見つかった。ネットを介した愉快犯の仕業という見方が大勢だが、横浜国大は「大学が張り出したわけではないので廃棄した。トイレでの食事を禁じる校則はない。マナーの問題」と困惑する。
一方、早大「マスコミ研究会」の藤田哲史さん(20)は「便所飯という言葉を知ったのは昨年の夏ごろ。落書きを見つけたのは新しい清潔なトイレ」と話した。
千葉大の宮下一博教授(青年心理学)は今月、講義で便所飯を取り上げたところ、男子学生の一人は「自分も1人で外食することに恐怖感を覚えている」と告げたという。
宮下教授は「便所飯を一般的現象と仮定すれば」と前置きした上で、「現代の学生は友人がなく、独りぼっちだと周囲から思われることを何よりも恐れている。引きこもりや大学を辞める者もいるほどだ」と指摘している。