Archive for 2009年7月28日


相次ぐ大学の募集停止、「減る一方」でいいの?
斎藤剛史  2009/07/23 15:00:00

2010(平成22)年度から学生募集を停止する4年制大学が、相次いでいます。今年に入って、愛知新城大谷大学(愛知県)、三重中京大学(三重県)、神戸ファッション造形大学(兵庫県)、聖トマス大学(同)などが、相次いで来春からの募集停止を明らかにました。私立大学の4割以上が定員割れをしており、これからも実質的に廃校になる大学が増えそうです。
文部科学省が大学数の抑制や規模の縮小へと政策のかじを切りつつあることは以前にもお伝えしましたが、大学の数を単に減らすだけでは、日本の大学全体が抱える問題の解決は難しいのではないでしょうか。

私立大学の数は、1994(平成6)年度に406校だったものが、2008(同20)年度は589校にまで増えています。しかし、この間に、他大学との合併・統合以外で、学生募集を停止した4年制大学は、立志舘大学(広島県、2004<平成16>年廃校)と東和大学(福岡県、2007<同19>年度より募集停止)の2校しかありません。
文科省は2010(平成22)年度以降、大学の新増設の認可を厳しくしたり、定員割れ大学に対する補助金削減などのペナルティーを強化したりする方針です。このままいけば今後、募集停止に踏み切る私立大学がさらに増えることも予想されます。大学関係者の間でも、現在の大学数は明らかに過剰で、市場原理によりつぶれる大学が出るのは仕方ない、という見方があります。

ただ、先に挙げた募集停止の4大学はいずれも地方にあり、かつ、一つの学部しかない「単科大学」です。地方にある単科大学や小規模大学がなくなってしまえば、日本の私立大学が、実質的に都市部の総合大学や大規模大学のみになってしまう、ということにもなりかねません。現在でも、都市と地方の間では、大学進学率に格差があります。私立大学が都市部だけになれば、進学率の格差はさらに広がるでしょう。

国際的に見ても日本の大学は、大きな問題を抱えています。中教審の資料によると、平均的な大学入学者の年齢層は、アメリカが24.9歳以下、イギリスが25.4歳以下、ドイツが24.0歳以下ですが、20歳以下となっているのは日本(19.2歳以下)と韓国(20.0歳以下)だけです。さらに、大学生全体(博士課程を除く)のうち留学生が占める割合は、イギリスが15.2%、ドイツが10.6%、カナダが6.9%などとなっているのに対して、日本は2.6%に過ぎません。国内の高校を卒業したばかりの若者のみを対象にした教育機関、という日本の大学は、国際的には特異な存在なのです。
現在の日本の大学数が過剰かどうかは、議論が分かれるところです。しかし、単に経営の苦しい大学や、学生の集まらない大学をつぶす、というだけでは、大学教育の適正化は困難です。大学再編論に当たっては、国際化や生涯学習の推進、地域間格差の解消など、広い視野に立った考え方が必要ではないでしょうか。

乱世には「アルバイト出身」の経営者が向いている!?
2009/7/24

首都圏を中心にチェーン展開をしているリサイクルショップで、アルバイト出身の取締役が誕生した。「入社当時は将来のことは何も考えていなかった」という新取締役は「アルバイトからの勤務経験が今に活きている」と語る。
当時は「その日がよければそれでよい」という感覚だった

リサイクルショップ「エンターキング」を運営するサンセットコーポレイションは2009年6月29日、新取締役に大川新吾氏を選任した。大川氏は元フリーター。「エンターキング」にアルバイトスタッフとして入社し、12年目の今年、取締役への就任を果たした。

1976年生まれの33歳。千葉県内の私立高校に入学したが、大学受験に失敗。専門学校に入学するも間もなく中退してしまい、しばらくは無気力でその日暮らしのフリーター生活を送っていたという。

「将来について考えていたことといえば、『背広を着て満員電車には乗りたくない』ということくらい。日払い・完全歩合給の仕事をしていたころは、必要な分だけ稼ぎ、あとは休みたければ休むという生活。その日がよければそれでよいという感覚でした。でも、25歳ぐらいになったら考え直そうということと、受験には失敗したけれど同年代のエリートには負けたくないという気持ちは常に持っていました」

「お店をどうすればお客様が喜ぶか、アルバイトさんが知っている」

1997年に「仕事が楽そうだったから」という動機で、「エンターキング」にアルバイトスタッフとして入店。すぐに中古ビジネスの利益率の高さに驚き、一気に仕事内容に興味を持つ。3ヵ月後には正社員に任用され、1年後には店長に。99年には商品部のゲームバイヤーに抜擢される。

そこでスタッフを育て部下を昇進させる喜びを知って、2004年に店舗統括部エリアマネージャーに就任。2007年店舗統括部長を経て、2009年営業統括本部長に就任。取締役に任命されることになった。大川氏は、

「当社では社員数の2.5倍のアルバイトさんに働いてもらっています。現場でお客様と接する機会が一番多いのはアルバイト。お店をどうすればお客様が喜ぶのか、彼らが一番よく知っている。私はアルバイト経験がある分、彼らが店長や会社をどう見ているのか、どうすれば彼らのモチベーションを上げられるか、普通の社員よりもよく理解できます」

と、アルバイト入社のメリットを語る。また、

「自分が成長できたのも、チャンスを与えてくれた上司がいたから。お店をお客様に合わせていくためには、店舗をまとめるマネージャーに権限を与えることが重要です。彼らに成長の場を与えたい」

と、現場出身者らしい視点でマネジメントを考えている。
「いまは無気力でもいいが、プライドを忘れないで」

フリーター生活を送っていた大川氏は、かつて想像もしなかった昇進を果たし、より重い責務を負うことになった。いま、かつての自分と同じように無力感を持っている若い人たちに伝えたいことは何だろうか。

「現段階では無気力でもいいと思います。好きな事をやりたければやればいい。ただ、何歳になったら自分を見つめ直そうということは、ぜひ決めておくべきです。あとは、その時点で何者かになっていなくても、『自分は変われるんだ、頑張れるんだ』というプライドを忘れないで欲しいですね」

また大川氏は、取締役の立場から、ひとこと付け加えた。

「当社のアルバイトさんには、私の経歴をみて、取締役までのキャリアステップがあることに希望や夢を持ってもらいたいです」

アルバイト出身で経営者に就任した人といえば、最近ではカレーハウスCoCo壱番屋の浜島俊哉社長(2002年就任)や旅行代理店エイチ・アイ・エスの平林朗社長(08年就任)、ジャストシステムの福良伴昭社長(09年6月就任)などがいる。

いずれも創業者社長からの若返りという意図も見られるが、以前の常識が通じない乱世には、エリート社員よりも、現場を良く知るアルバイト出身の経営者が向いているのかもしれない。