相次ぐ大学の募集停止、「減る一方」でいいの?
斎藤剛史 2009/07/23 15:00:00
2010(平成22)年度から学生募集を停止する4年制大学が、相次いでいます。今年に入って、愛知新城大谷大学(愛知県)、三重中京大学(三重県)、神戸ファッション造形大学(兵庫県)、聖トマス大学(同)などが、相次いで来春からの募集停止を明らかにました。私立大学の4割以上が定員割れをしており、これからも実質的に廃校になる大学が増えそうです。
文部科学省が大学数の抑制や規模の縮小へと政策のかじを切りつつあることは以前にもお伝えしましたが、大学の数を単に減らすだけでは、日本の大学全体が抱える問題の解決は難しいのではないでしょうか。
私立大学の数は、1994(平成6)年度に406校だったものが、2008(同20)年度は589校にまで増えています。しかし、この間に、他大学との合併・統合以外で、学生募集を停止した4年制大学は、立志舘大学(広島県、2004<平成16>年廃校)と東和大学(福岡県、2007<同19>年度より募集停止)の2校しかありません。
文科省は2010(平成22)年度以降、大学の新増設の認可を厳しくしたり、定員割れ大学に対する補助金削減などのペナルティーを強化したりする方針です。このままいけば今後、募集停止に踏み切る私立大学がさらに増えることも予想されます。大学関係者の間でも、現在の大学数は明らかに過剰で、市場原理によりつぶれる大学が出るのは仕方ない、という見方があります。
ただ、先に挙げた募集停止の4大学はいずれも地方にあり、かつ、一つの学部しかない「単科大学」です。地方にある単科大学や小規模大学がなくなってしまえば、日本の私立大学が、実質的に都市部の総合大学や大規模大学のみになってしまう、ということにもなりかねません。現在でも、都市と地方の間では、大学進学率に格差があります。私立大学が都市部だけになれば、進学率の格差はさらに広がるでしょう。
国際的に見ても日本の大学は、大きな問題を抱えています。中教審の資料によると、平均的な大学入学者の年齢層は、アメリカが24.9歳以下、イギリスが25.4歳以下、ドイツが24.0歳以下ですが、20歳以下となっているのは日本(19.2歳以下)と韓国(20.0歳以下)だけです。さらに、大学生全体(博士課程を除く)のうち留学生が占める割合は、イギリスが15.2%、ドイツが10.6%、カナダが6.9%などとなっているのに対して、日本は2.6%に過ぎません。国内の高校を卒業したばかりの若者のみを対象にした教育機関、という日本の大学は、国際的には特異な存在なのです。
現在の日本の大学数が過剰かどうかは、議論が分かれるところです。しかし、単に経営の苦しい大学や、学生の集まらない大学をつぶす、というだけでは、大学教育の適正化は困難です。大学再編論に当たっては、国際化や生涯学習の推進、地域間格差の解消など、広い視野に立った考え方が必要ではないでしょうか。